冬の日の目覚め

   冬の日の目覚め

 君が見せてくれた命のかがやき
 抱き上げると、私を一に見つめた
 きれいに澄んだ、きらきらした瞳

 離乳食を持っていくと
 もううれしくてうれしくて
 ベビーチェアの中で立ち上がって
 何度も何度も跳びはねながら
 母と父を迎えてくれたね

 はじけるような明るい笑顔
 耳をつんざく元気な泣き声
 そして、生まれたときからの
 まれに見る大食漢
 
 君が中学3年生のとき
 君は激しく私に反抗した
 「殴ってやりたい」と
 絞り出すように言った君の
 固く握りしめた右の拳は
 小刻みに震えていた

 初めて
 「パパ」ではなく
 「おとうさん」と
 呼んでくれた夜
 私はおとうさんになろうと思った

 すべてを優しく受け止めてくれた
 穏やかな微笑み

 父の無理解な言葉に
 黙ってこぼした一粒の涙

 生きようとする意志のたくましさ
 生きようとする意志の美しさ
 生きようとする意志のけなげさ

 君がその生を終えるまで
 一生懸命生きようとしていたその姿を
 私は夢の中で思い出していた
 そして無性に悲しくなって
 それから無性にさびしくなって
 私は目が覚めた

 寝室のレースのカーテンからは
 薄明るい外の気配が感じられ
 今日も
 君のいない
 いつもの朝が始まっていた
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あさひなせいしろう

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