ベートーベン「ピアノ・ソナタ第14番」

   ベートーベン「ピアノ・ソナタ第14番」

 女性ピアニストが鍵盤の上に手をかざすと
 そこで彼女の動きが止まった
 それを見て
 観客は息をのんだ
 にわかに高まる緊張
 一呼吸、二呼吸
 場内の緊張が頂点に達したとき
 おもむろに、しかも決然と、確信をもって
 鍵盤に指がおろされ
 ピアノ・ソナタの演奏が始まった

 「月光」と名付けられたこの曲
 その印象のとおり
 舞台で演奏を始めた彼女に降りそそぐスポットライトは
 雲間から射し込むひと筋の月の光のようで
 彼女はその月の光を一身に浴びながら
 その極めて微細な光の粒子の
 一粒一粒が天から落下する有様を
 ピアノの一音一音で忠実に再現しようと
 全身全霊で、極限の集中力を以って、挑む

 観客は金縛りにあったように動きを止め
 息詰まる緊張感に耐えながら
 この創造の成り行きを、稀有な歴史的事件の目撃者となるべく
 固唾をのんで見守る

 第一楽章が終わるまで続くこの緊張に耐えた観客は
 第二楽章でやっとが解き放たれ
 あらためて厳粛で荘厳な第一楽章の迫力の記憶をたどってみる

 それにしても、楽聖ベートーベンから
 この名曲を贈られた17歳のジュリエッタは
 演奏を聴いて、いったいどんな感想をもったのだろうか



【あとがき】
  ピアニスト・渚智佳さんのピアノ・リサイタルに
 行きました。コロナ禍のせいもあり、プロの音楽家
 の方の生演奏を聴くのは3年ぶりです。やはり、ラ
 イブはすごいですね。
  渚智佳さん、ありがとうございました。

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