春のような

   春のような

 「いやぁ、暑いですねえ。今年はいきなり
  冬から夏になっちゃいましたね。
  春がどっかへ行っちゃいましたねぇ」
 こんなおしゃべりをしていた去年の春4月
 日本では春がなくなってしまったかのような天気だった
 そのころヨーロッパのかの国の人たちは
 力づくで「春」を奪われ、代わりに「地獄」がやってきた

 春のような明るい日差しを浴びて
 洗濯物を干しながら
 春をなくした人たちを想う
 想像力の限界を超えた
 破壊と殺戮
   
 春のような明るい日差しに導かれて
 はしゃぐ子どもたちの声を聞きながら
 春を弔う人たちを想う
 未だかつて経験したことのない
 絶望と喪失の衝撃

 春のような明るい日差しを眺めながら
 湯気立ちのぼる朝餉の膳を前にして
 春を渇望する人たちを想う
 背筋が、魂が凍りつくような
 拷問、虐殺の恐怖

 春のような明るい日差しを話題に
 家族と談笑しながらふと
 春を奪還しようとする人たちを想う
 燃えたぎる
 暗い情念、憎しみと復讐のこころ

 春のような明るい日差しを避けて
 薄暗い部屋の中で私は一人
 遠い国で繰り広げられている
 悪夢のような出来事の映像を
 古い小さなテレビ画面で見る

 耳をつんざく恐ろしい砲撃の音
 破壊され、燃え尽きた集合住宅の残骸
 何もかも踏みつぶして突進する戦車
 廃墟にたたずむ老人
 泣きわめきながら、さ迷い歩く少年
 わが子の遺体にとりつき、泣き崩れる母親
 人々の苦悩の表情と涙、涙、涙
 戦場という名の地獄で
 今も踏みにじられ続ける人間の尊厳
 そして、その地獄の真っただ中で
 命がけで人々を助けようと
 奮闘する名もなき英雄たち・・・・

 今年こそ、かの国に、かの国の人たちに
 春は来るのだろうか
 
 どうか、かの国の人たちに
 救いと平穏を
 失われた春を、再び
 
スポンサーサイト



コメント

非公開コメント

プロフィール

あさひなせいしろう

Author:あさひなせいしろう
 拙い文章を読んでいただき、とて
もうれしいです。心より感謝申し上
げます。
 もしも何か感じるものがありまし
たら、「フリーエリア」のバナーを
それぞれ1回ずつクリックしていた
だけると、さらにうれしいです。私
のブログの生きる糧になります。お
手数をおかけしますが、どうぞよろ
しくお願いいたします。
 こうして読んでいただけたのも、
何かのご縁にちがいありません。あ
なたの人生の今日というかけがえの
ない一日が、すばらしいものになる
ことをお祈りいたします。
 最後まで読んでいただき、ありが
とうございました。
  

このブログの訪問者

フリーエリア

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

QRコード

QR