評伝 モハメド・アリ

   品性とプライドと前向きに生きる覚悟

 台風一過
 気持ちよく晴れわたった空の下で
 久しぶりに読書をしようと
 日曜日の午後
 読みかけの本を持って
 庭に出た

 陽射しは強かったが
 日陰は涼しく快適で
 ときおり木立ちの緑の枝を
 強く揺すって吹く風は
 過ぎ去った嵐の余韻であったが
 それも晴天の一つのアクセントになり
 絶好の読書日和になっていた
 
 庭木のヨーロッパゴールドの木陰に
 木製の大きな折りたたみ椅子を据え
 サイドテーブルには持参した本を置き
 準備は万端ととのった

 持ってきた本は、「評伝モハメド・アリ」
 伝説のボクシング世界ヘビー級チャンピオン
 モハメド・アリの伝記である
 書名の副題には
 「アメリカで最も憎まれたチャンピオン」
 と書いてある
 本文だけでも576ページの分厚い本だが
 買ってから数か月経つ今でも
 諸般の事情で読み進んだのは
 まだ29ページまでだった
 12歳のカシアス少年が
 ようやくボクシングに
 を託しはじめたころで
 私の読書は止まっていた
 まだ彼の伝説は始まっていない

 まずは椅子に深く腰をおろし
 それから腰を前にずらして仰向けになり
 空を見上げた
 青い空に白い雲がゆっくり流れていた

 「ああ、疲れがすうっと抜けるようだ
  気持ちがいいなあ」
 ごくごく自然な流れで
 2日前に届いた
 恩師からの手紙を思い出していた

 手紙の内容は、今の自分の生き方に
 多くの示唆を与えてくださるものだった

 「どんな困難や試練に見舞われても
  品性とプライドを忘れてはならないこと
  前向きに生きる覚悟をもつこと」

 恩師は自らの生き方に
 この教えを体現されている
 そして恩師は、この言葉を、私と同じように
 人生の師として仰ぐ方から教えられたという
 
 手紙を何度も読み返し、思い返すそのたびに
 熱いものが私の胸にこみあげる
 自分の中に勇気が湧き出てくるような気がする
 そして、人との出会いの
 不思議さとありがたさを
 あらためて静かにかみしめる

 空を見上げると
 あいかわらず
 青い空に白い雲が流れている
 明るくて幸せなこの風景を眺めながら
 私はもう一度思い返していた
 「品性とプライドと前向きに生きる覚悟」
 
 私は身もも満ち足りて
 そのまま眠りに落ちてしまった

 どれくらい眠っただろうか
 風が冷たく感じられて目を覚ますと
 空は様相を一変させ、灰色の雲がたちこめ
 今にも雨が落ちてきそうな天気に変わっていた

 急いで椅子を撤収しながら
 ふと思った
 「品性とプライドと前向きに生きる覚悟・・・
  モハメド・アリの人生はどうだったんだろう?」

 とうとう今日も
 「評伝 モハメド・アリ」は
 諸般の事情で
 1行も読み進めることができなかった



 【あとがき】

  「評伝 モハメド・アリ
   アメリカで最も憎まれたチャンピオン 
                 (岩波書店)
    ジョナサン・アイク 著
    押野素子 訳

  綿密な調査と的確な文章表現の、読み応えのある
 評伝です。なぜあさひなは読むのが遅いのかという
 と、諸般の事情と、私の怠惰、そして、おいしいも
 のや楽しみは後回しにするという性格によります。

  最後まで読んでいただき、ありがとうございました。 
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