2023/02/02
ミスコミュニケィション
ミスコミュニケィション
「血圧を測ってみましょう」と
医師が言って目配せすると
両手に器具を振り分け持った
白衣姿の看護師が
準備万端整ってござると
言わんばかりの冷静な面持ちで
つつつっと前に進み出て
椅子に座った私のそばに
ぴたりと立って動きを止めた
私は長袖のジャージ姿
腕に帯を巻くにあたって
上着のジャージを脱ぐのがいいのか
分からないので聞いてみた
「このまま着ててもダイジョブでしょうか」
するとその女性看護師は
「(生地が)薄ければ(そのままで)ダイジョブです」
と答えた
なるほど着たまま測れるのなら
それは大いにありがたい
しかし測定可能な生地か
患者の私は分からない
そこで私はまた聞いた
「このまま着ててもダイジョブでしょうか」
すると彼女は表情を変えず しっかり前を向いたまま
「(生地が)薄ければ(そのままで)ダイジョブです」
と再び答えた
そうしてそのままじっと立ってる
いや そりゃそうだろうけど
私は測定可能な薄さかどうか
判断できる立場じゃないので
それをあなたに聞いてるのです
私はそう心の中でつぶやいて
頭をもたげてきた徒労感を抑え込みながら
再び事態打開のための働きかけを試みた
「このジャージはダイジョブでしょうか」
彼女は またもやロボットのように
「(生地が)薄ければ(そのままで)ダイジョブです」と
一本調子の口調で答えた
そうしてじっと立ち尽くす
このトンチンカンなやり取りに
気づいた医師はにやにやしながら
自ら私の腕をとり
血圧計の腕帯を
慣れた手つきで巻き始めた
miscommunicationとは
情報を発信する側と受信する側の間に認識の違いが生じていて
コミュニケィションが成立していない状態をいう
この世界はmiscommunicationの悲喜劇に満ちている
もしもそうであるのなら
目くじらたてずにゆっくりと
誤解を解いていきましょう
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